きつねこの週刊デイリー寿司ニュース

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通勤でエレベーターを利用するときの考察

以前から、エレベーターを意識的に使っている。特に東京都内の地下鉄では、エスカレーターよりもエレベーターのほうが有利なことが多い。
 
東京都内の地下鉄は開発に開発を重ねた結果どんどん地中深くなっていき、エスカレーターや階段がハンパなく長い路線や駅も数多い。地上とホームの間があまりに遠いため、隣駅に行くとき、地下鉄を使わず歩いた方が早いケースすらある。そういった深すぎる駅ではエレベーターは大変便利である。
 
エレベーターの利点は大きく三つある。一つは省力性、もう二つは混雑回避による快適性と時短である。
 
省力性についてはあらためて説明する必要もないと思うが、多くの場合、エレベーターを使うと歩く距離を最短化できる。もちろんそれはエスカレーターでも可能なのだが、こんな文章を書こうというほど常に効率化を考えながら生活している人間が、エスカレーターを歩かないわけがない。千代田線新御茶ノ水駅のエスカレーターの恐ろしい長さは有名だが、あれなどは最初から最後まで歩き続けるとふくらはぎがビキビキになり、息が上がってしまう。かといって左側で立ち止まっているとその遅さにイライラが積もりつもって死にそうになる。典型的タイプA人間である。運良く、目の前に就活女子大生やOLのレディスーツでピタピタのお尻などがあればまた話は別だが、そちらを突き詰めるといずれ両手に枷をはめられることが間違いないし、そういう事象はおおむねマーフィーの法則で支配されていて、意識すればするほど、目の前にはおっさんの型崩れしたスラックスの尻と、似合わないバーバリーの通勤バッグが現れることになるのでオススメしない。
 
通勤通学の風景を思い出してもらいたいが、おそらく、乗降客の九割以上がエスカレーターを使っているのではないだろうか? エスカレーターは長蛇の列なのに、エレベーターには列といえるほどの列もなく、一往復も待てば乗れることがほとんどである。エレベーターに乗ろうという奇特な人も、乗り切れずにもう一往復待つ必要があるとわかった瞬間に半数がエスカレーターに向かう。明らかにエレベーターのほうが混雑度が低く快適なのだが、ほとんどの人がわざわざ混雑度の高いエスカレーターを目指す。一つは周囲に流されての思考停止だろうが、もう一つには、進捗が見えることも大きいのではないかと思う。
 
エスカレーターは常に列が動いているため、そこに並んでいる自分が進みつつあることがよくわかるが、エレベーターの場合は待っている間は扉の前でただただ立ち尽くしているだけで、あとどれくらい待てばエレベーターに乗れて目的地に着くかというのを認識するのが非常に難しい。人間の脳は、進捗が見えない行動を嫌う。今ぱっとソースが出てこなくて申し訳ないが、目的地まで最短距離だがあとどれくらいで到着するのかわからない道と、ちょっと遠回りだが、あとどれくらいで到着するのかわかる道だと、後者を選ぶ人のほうが多い、という研究結果を見たことがある。ほとんどの人間は、能動的かつ思考停止的にエスカレーターを利用している。いったん固定観念を捨てて論理的に考えてみると、エレベーターのほうがエスカレーターに比べて明らかに空いているのがよく見える。
 
混雑緩和についてはもうひとつある。ほとんどの人がエスカレーターを使うため、エスカレーター乗り口付近は車両もホームも混雑する。人が多くてちびちびとしか進めないのは非常にストレスだが、多くの駅でエスカレーター乗り口と距離が離れているエレベーター付近ではそんな混雑もなく、電車に乗っている段階から既に快適である。「降りる駅のエスカレーター乗り口の場所に合わせて乗るのだ」などとドヤ顔で豪語する人は数多いが、むしろ浅はかに見える。エレベーターの位置に合わせて乗るほうがより快適で効率的である。
 
さて、実は私がもっとも主張したい、こんな落書きを書こうと思い立った当初のきっかけについてであるが、それはエレベーターの乗り方にかんする発見と考察である。ここまでのエレベーターの利点についての説明は、あくまでもその説明のための前文でしかない。そしてこの発見は、前文で述べた利点のうちの主に快適化と省力化をさらに強化するものであり、これによってエレベーター通勤術は完成するといっても過言ではない。むしろ、この発見なくしては、エレベーター利用のメリットは著しく低減するとすら言える。具体的には「エレベーターに乗るときの位置」についての発見である。
 
エレベーターの最大の特徴が、複数人が同時に運ばれるというものである。狭い中で他人とひしめきあうのはお世辞にも快適とは言い難い。また、乗り降りの際にもストレスは発生する。閉まりかけのエレベーターに乗ろうと走ってくる人、我先に降りる人など、他人の行動によって被る不快である。エレベーターを快適に利用するには、これらの問題点への対策が肝要である。
 
まず他人との接触であるが、これは簡単な問題で、できるだけ他人と接する面積を小さくしてやればよい。具体的には壁にくっつくようにするべきだ。当然壁よりも角のほうがなおよい。
さらには四角形のエレベーターに角が四つあるうち、乗降を考えて降りるドア側の二隅どちらかがよいのだが、ここまでは誰でも考えていることで、観察しているとほとんどの人がここで間違えている。
 
ここでも思い出してほしいが、ほとんど全ての人が、エレベーターに乗ると自動的に、扉を入って左側の角に立つ(これを「手前左」と定義してみる)。コントロールパネルがあるからである。皆一様に、エレベーターに乗るとコントロールパネルの前に立つ。もちろん乗員が自分しかいなければ自分で操作するので、他人がいようがいようまいが、最初にエレベーターに乗った場合にコントロールパネルに向かうのは行動ルールとしてはシンプルであり、理解できる。ほとんどの人がこの無意識のルールにのっとって行動している。
 
しかしながら、他人の同乗するエレベーターを操作するのは非常に神経に触る。意識の低い中年や老人などが壁にもたれかかり、壁に横向きに設置されているコントロールパネルのボタンを体で押しているがために、閉ボタンを押しても閉まらなかったりする。そして、目的地に到着したら、ほかの人が降りるまで開ボタンを押してやり、自分は一番最後に降りるのだ。バカバカしい。もちろん私も、ベビーカーを押したり子供を抱いたお母さんや、腰が曲がって本当にヨボヨボの老人、クッソ重そうな荷物を抱えた人に対してはそういった親切もするが、いたって健康な大人たちに対してそんなことをしてやる必要など微塵もない。ゆえに、この場合の最適解は「降り口ドアの、コントロールパネルがない側の角に立つ」である。
 
なお、観察によると、多くの人が、すでに一人目の乗ったエレベーターに乗り込む場合、お行儀よく奥から詰めて乗っているように思う。実に理にかなっていてもっともではあるが、やはりこれも降りる際にモタついてよくないので、二番目に乗る場合であっても、ドアを入って右側の角(手前右)を目指すべきである(乗降ドアが1つの場合)。角に体をぴったりつければ、後続の人の邪魔にはならない。また、多くの人が奥から詰めて乗るため、二番目でなくてもほとんどの場合、手前右を占有することは可能であり、手前右が埋まっているほど混む場合、手前真ん中にかろうじて乗れるか、乗れないかであるため、いずれにしてもエレベーターに乗る際には手前右か手前真ん中に乗ることができ、降りる際のスムーズさは随一である。
 
エレベーター術、一度おためしいただきたい。おそらく、この技がもっとも効果を発揮するのは、コミケ当日の国際展示場前駅のエレベーターだと思う。びっくりするほど一瞬で地上あるいはホームに到達することが可能である。