きつねこの週刊デイリー寿司ニュース

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同人誌の部数のきめかた

次のイベントに向けて、同人誌を何冊印刷するか。
 
同人作家にとって未来永劫尽きることのない悩みですね。
 
仕事が暇すぎるので、5年間で50回くらい同人イベントに出て、本を30冊くらい作ってきた経験からある程度の指針みたいなものを書き出してみます
 
同人誌の部数をを決めるときの判断材料はかなり多岐にわたり、個別要因だけでなく、特定の要因の組み合わせによってがらっと部数が変わる場合もあるが、とりあえずひとつづつ解説していく。
 
■一次創作か、二次創作か
 
二次創作は、原作の人気によって完全に売り上げが左右される。大幅に刷りすぎて、赤字のままジャンルのブームが過ぎると同人活動の継続が困難になるため、特に部数の検討を念入りにする必要がある。
一時創作については、二次創作ほど外的要因による売上の上下がなく、長期間にわたって売り続けることができるので、二次創作よりは部数の検討の難易度は低い。
 
■漫画か小説か
 
男性向けには小説の市場はほぼ存在しない。
女性向けの二次創作小説の場合、ジャンルのファンの平均年齢が低いほど小説比率は低く、年齢が高いほど小説比率は高いと考えるとよい。
小説のメインターゲットは20代後半~30代~、未成年のライトオタはほぼほぼ小説は読まないと想定してよい。
また、漫画と小説の部数比率については、おおむね4:1程度に換算すると検討しやすいかもしれない。
 
■ジャンル(覇権:1000SP~、大規模:~1000SP、中規模:~500SP、小規模:~200SP、零細規模:~50SP
 
覇権ジャンルの勃興期~絶頂期にかけて、
壁:2000~ 偽壁~胆石:1000~2000 島端~胆石:500~1000 島:~500 くらいが1イベントで頒布可能な現実的な上限と思われる(ふつうのイベントだと、搬入計画に500も書けば胆石に配置されるので、島中に500だの1000だの持ち込むことはありえない)
実際は、イベントのSP数よりも一般来場者の数(=市場の大きさ)のほうが重要で、さらには市場の大きさよりも、市場の大きさとSP数の比率(1SPあたりの市場独占度)のほうが重要なので、大規模ジャンルだから売れるというものでもない。最大イベントのSP数や、pixivの作品数や勢い、2chの同人スレの勢い、twitterでの周囲の風向きなどで総合的に判断する必要がある
 
■ジャンルの時期(黎明期、勃興期、絶頂期、斜陽期)
 
・ジャンルが登場してすぐ
 
需給ギャップが大きい(今すぐ同人作品がほしい読み専は多いが、書き手が追い付かない)ので、好きカプ好きキャラはすべて買い漁ることになる。予算も潤沢で棚も空いている。素人はここでイベントに参加できるとボーナスタイム
完売祭りが起きる
覇権ジャンルで平均レベルの作品であれば勝負かけて多めに刷っていい 完売祭りで自サークルだけ在庫が残っていると入れ食い 想定より売れなくても先は長いので気が楽
 
・ジャンルの絶頂期(=書き手が追い付いてきてだいぶ作品が出そろったころ=イベントのSP数が最大になるころ)
 
ある程度サークルの取捨選択が進んでいるので、下手な人が大規模ジャンルだからといってこの時期に初参加すると爆死する
このころにクソ上手い大手サークルが乗り込んできて読み手をすべてかっさらって行く
イベント規模が大きすぎると島中まで回れないので島中爆死現象
勃興期から地道に活動していてある程度の固定ファンがいる場合は安定
 
・ジャンルの斜陽期
 
新ジャンルが出てくると急激に売れなくなっていく
読み手の棚にも本が増えてくる
それなりにファンがついている場合は、新カプの発掘で新しい需要を生み出すことができる
 
■判形、ページ数
 
薄すぎる本(~20P)は価格設定も安くせざるを得ないので、少部数(~200)の場合につらい
暑すぎる本(100P~)は原価率がかなり高くなるので、やはり少部数のときにつらい
 
■本文カラー(カラー、モノクロ)
 
フルカラー本は1000部以上でないとつらい
内容を充実させて価格が高めでも喜んでもらえるようにする
薄くて安いフルカラー本は壁~シャッターレベルのサークルじゃないとつらい
 
■表紙(イラスト、デザイン)
 
売りたいならイラスト表紙一択
売るつもりがないならデザイン表紙でもなんでもいい
 
 
 
 
 
 
 
 
実際、考えることが多すぎて、無理ですね
 
もうちょっと簡単に考えましょう
 
■50部以上売れる見込みがない、あるいは最初からそんなに売るつもりがない本
 
・薄い本:自宅コピー、セブンイレブン 厚い本:オンデマ
 
・全部売り切ってトントンかちょっと黒字くらいの印刷費で検討
 
■50部以上は売れると思う
 
・安い印刷屋でオフセット200
 
・イベント100、とらのあな100
 
・オフの場合、原価率25%~30%程度に収まるようにするととても楽
 
・目が慣れてくると、オフに比べてオンデマの印刷品質の悪さがめちゃくちゃ気になってくる
 
・オンデマの100とオフセの100、200の値段がほとんど変わらない
 
■100部は売れそう
 
・オフセ300~400
 
・イベント200、とら100~200
 
■200部以上は売れると思う
 
・オフセ500~600
 
・イベント300、とら200~300
 
■500くらい売れる
 
・オフセ800~1000
 
・イベント500、とら500
 
とらのあな事前発注を使う
 
・表紙を先に仕上げる、表紙と本文数ページを虎の穴に送って前発注もらう
・虎の穴の発注+売れそうな数を印刷
 
・~100部 : ほぼ店頭に出回らない
・100部 : よくて なんば、梅田、池袋、秋葉原、名古屋 くらい
・200部 : 福岡、札幌、仙台、などにも回りだす
・300部 : ピックアップとしてスタッフによる推薦記事が作られ始める
・500部~ : ほぼ全店舗に入る
 
どういうことかというと、多く入れれば入れるだけ露出が増えるので、100部で10部売れるのが、300部だと30部でなく100部売れるようになる
 
■覇権ジャンル&半年、1年後もジャンル人気が続く見込みがある
 
・次のコミケ&大型イベントなどの売り上げもある程度見込んで多めに刷る
 
・minikuraに100部ずつぶちこむ:書店の追加発注&イベントのときに発送依頼をするだけで便利
 
■ジャンル時期による倍率
 
黎明期~絶頂期 : 売れそうな数の2~3倍
絶頂期過ぎた : 売れそうな数
衰退期 : 売れそうな数の半分~売れそうな数
 
 
 
こんなかんじですか
 
 
p.s.
「男性向け小説市場が存在しないものと考えてかまわない」という表現についてのツッコミがちらほらあるので、やや表現を変えました。また、東方や艦これに小説サークルが一定数あるという指摘もありましたが、東方も艦これも男性向けではなく、男女半々のジャンルだと認識しています。